マテリアルライフ学会誌
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スマルト油絵具の変色に対するカリウムとコバルトの影響 (III)
含有成分比の異なる自作スマルトによる検討
秋山 純子稲葉 政満
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2004 年 16 巻 1 号 p. 22-27

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抄録

スマルトはコバルトガラスを細かく砕いて作った青色の顔料である.スマルトは変色しやすい顔料と言われているが, 未だ変色のメカニズムは明らかにされていない.本研究では, カリウムとコバルトの含有成分比の異なるコバルトガラス (自作スマルト) を作成し, スマルト粒子中の成分が乾性油の酸化と変色に及ぼす影響の違いを検討した.作成した自作スマルト5種類を各々亜麻仁油に添加, 110℃ で336時間加熱し, 亜麻仁油の脂肪酸組成と可視吸収スペクトルを経時的に測定した.亜麻仁油中のリノレン酸量の減少を指標とした酸化反応はカリウムの含有量が多いほど抑制され, コバルトの含有量が多いほど促進された.分光分析の結果, カリウムの含有量が多いほど, そしてコバルトの含有量がないほど変色が大きかった.以上のことから, スマルト中のカリウムおよびコバルトの含有成分比の違いによって乾性油の酸化と変色の程度に違いが生じることが明らかとなった.

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