Medical Mycology Journal
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原  著
神経ブロック注射部位に生じた原発性皮膚Aspergillus calidoustus感染症の1例
佐藤 之恵筋野 和代鈴木 亜紀子深澤 奈都子大内 結矢口 貴志佐藤 友隆
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2011 年 52 巻 3 号 p. 239-244

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抄録

神経ブロック注射部位に生じた皮膚アスペルギルス症の1例を経験したので報告する.67歳女.6年前より成人スティル病,間質性肺炎でプレドニン,免疫抑制剤内服治療中であった.帯状疱疹後神経痛に対して某ペインクリニックで左腰部に神経ブロック注射を施行.その後,注射部位に一致して出現した軽度圧痛のある3つの皮下結節を主訴に当科を紹介受診.1つを切除生検.術中,結節内部より緑色の膿汁の排出を認めた.病理組織学的には皮下組織に著明な好中球浸潤があり,膿瘍を形成していた.PAS染色,Grocott染色に染まる菌糸を認め,組織,膿汁の真菌培養にてAspergillus spp.が分離され,全身検索では内臓病変なし.原発性皮膚アスペルギルス症と診断した.残りの2つを全摘の上,イトラコナゾールの内服治療を開始するも皮下膿瘍が再発.分離培養された真菌のリボゾームRNA遺伝子のITS領域の塩基配列の解析でAspergillus ustusと同定し,その後,37℃での発育およびβ-tubulin遺伝子の塩基配列によりA. calidoustusと同定した.文献上のA. ustusおよびA. calidoustusの薬剤感受性に従い,テルビナフィン内服に変更しデブリードマンを予定していたが,間質性肺炎の急性増悪のために永眠された.神経ブロック部位に生じた原発性皮膚アスペルギルス症はまれであるが,免疫不全患者では十分な注意が必要である.

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© 2011 日本医真菌学会
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