Medical Mycology Journal
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総説
好中球機能異常による感染防御能の低下と炎症の誘発
荒谷 康昭三浦 典子大野 尚仁鈴木 和男
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2012 年 53 巻 2 号 p. 123-128

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抄録

感染によって活性化された好中球は,活性酸素を放出して殺菌に寄与する. ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は好中球のみに存在し,過酸化水素と塩化物イオンから次亜塩素酸が産生される反応を触媒する. MPOのノックアウト(MPO-KO)マウスが,Candida albicans, Aspergillus fumigatus, Cryptococcus neoformans の肺感染に対して極度の易感染性示す筆者らの以前の報告からも,生体防御における好中球由来の活性酸素の重要性が理解できる. 一方,興味深いことに,炎症誘発剤として頻繁に使われているザイモザンをMPO-KOマウスに経鼻投与しても,生菌感染時と類似した重篤な好中球性の肺炎を発症することを筆者らは見いだした. その発症機構を解析した結果,MPO-KO好中球は野生型好中球よりも,MIP-2を過剰分泌することが判明し,このことが,MPO-KOマウスの肺炎が野生型マウスよりも重篤化する一因であることが示された. 以上のことより,MPOの欠損は,単に感染防御能の低下を導くだけでなく,組織の炎症を助長する可能性もあることが強く示唆された.

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© 2012 日本医真菌学会
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