Medical Mycology Journal
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総説
ロングパルスNd : YAGレーザーを使った爪白癬の治療:てこずる爪水虫をレーザーで治せるのか?
須賀 康木村 有太子比留間 政太郎
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2014 年 55 巻 2 号 p. J65-J71

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抄録

 爪白癬はよくみられる皮膚疾患であるが,外見上は不潔にみられてしまう点や,時に疼痛を生じて日常生活に支障を生じる点などから治療を希望する患者も多い.しかしながら,第一選択治療の抗真菌剤の内服薬を使用しても,治療に難渋する症例が数多く経験されている.近年,われわれはこれら既存の治療法では難治の爪白癬に対して,ロングパルスNd : YAGレーザー(Cutera Inc., 米国)を使った新しい治療法を試みている.すなわち,本レーザーはファイバー導光も可能なため,本邦で医療機器承認を受けている同型のレーザー機器より比較的小型であり,低コストでメンテナンスもしやすい医療用レーザーに適した器械となっている.爪白癬の病巣には,スポット経 5mm のレーザーを皮膚表面から数cm離してシャワーのように照射する低出力連続照射(Laser GenesisTM)を用いて治療を試みた.治療に対する評価は,混濁比の改善度と直接鏡検の結果を用いて 5 段階で行った.その結果,本治療の爪白癬に対する有効率は 68.8% であり,有用な治療法の 1 つであることが示された.治療期間中に特に大きな副作用はみられなかった.本治療は今のところ保険適用になっていないが,その作用機序は抗真菌剤と明らかに異なっているため,内服治療などに抵抗性の症例に対しても有用な選択肢の 1 つになると考えている.今後はさらに内服・外用抗真菌剤との組み合せ治療などを検討することにより,患者の治療満足度を大きく高めることが期待される.

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© 2014 日本医真菌学会
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