Medical Mycology Journal
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総説
トリコスポロンの抗真菌薬感受性と耐性機構
串間 尚子時松 一成石井 寛門田 淳一
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2015 年 56 巻 4 号 p. J123-J128

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抄録

深在性トリコスポロン症は好中球減少患者に発症するが,近年ではキャンディン系薬の使用中に発症するブレイクスルー感染症の事例が報告されている.これは原因真菌であるTrichosporon asahiiがキャンディン系薬に一次耐性を有するためである.一方,アゾール系薬に対して高度耐性を示すトリコスポロン属が検出された症例が報告され,アゾール系薬の使用は同薬剤に対する二次耐性を誘導する懸念がある.本症は比較的まれな感染症であるため各種抗真菌薬に対するブレイクポイントは設定されておらず,厳密にいえば感性か耐性かの判定はできない.しかしわれわれは,in vitroT. asahiiとフルコナゾールを長期間接触することで同薬剤に対するMIC値が接触前の16倍以上に上昇することを確認し,耐性を獲得したと思われる過程を示した.トリコスポロン属の薬剤耐性機序は十分に解明されていないが,カンジダ属やアスペルギルス属で認められるアゾール系薬の標的分子の修飾や標的分子へのアクセスの低下などと同様の機序を想定している.トリコスポロン症は今後増加が懸念されており,大規模な薬剤感受性試験の検討に基づくブレイクポイントの設定や薬剤耐性機序の解明が急務であり,これまでの研究でわかったことと今後の課題を概説する.

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© 2015 日本医真菌学会
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