Medical Mycology Journal
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総説
大学における皮膚真菌症診療・教育の現状と課題
望月 隆
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2016 年 57 巻 2 号 p. J89-J94

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抄録

医育機関における皮膚真菌症の診療・教育の現状を把握し,必要な支援策を検討するために,2015年5月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) の支援を受け,筆者の責任において全国大学医学部皮膚科教授ならびに大学病院の皮膚科科長にアンケート調査を行った.アンケートの内容は,A. 大学病院での一般的な真菌症診療の実際,特に真菌検査の実施状況について,B. 皮膚真菌症の診療・教育支援への希望について,C. 医学生,研修医,専攻医に対する教育の現状についてである.このうちA,Bは2007年に全国の皮膚科教授に行ったアンケートとほぼ同一の内容であった.合計117名にアンケートを発送し,98名・施設 (83.8%) から回答が得られた.「真菌症診療の実際」では,真菌培養を原則全例行うとした回答は約3%であり (2007年調査時約9%),ほとんどしない,あるいはしないとの回答は約36%を占めていた.疾患別の真菌培養は深在性皮膚真菌症については約83%の施設で行うとしていたが,浅在性真菌症では頭部白癬でも約39%の施設でしか行われていなかった.Trichophyton tonsurans感染症の経験はしばしば,あるいは時々とした回答が約22%,まれに,あるいはないとした回答が約78%であった.「診療・教育支援」では支援を必要,あるいはあれば便利とした回答が約96% (2007年調査時約89%),内容的には菌種同定,深在性真菌症の診療支援 (情報の供給),ついで真菌講習会開催に対する希望が多かった.「教育の現状」では専攻医にKOH法の指導を行い,これが満足に行えるとした回答が約80%を占めたが,専攻医が真菌培養を経験する機会がない,あるいは経験しないほうが多いとした回答は約45%であった.
以上より実施可能な支援策を考えると,講習会の開催を継続すること,同定依頼への対応が可能な施設の情報,深在性皮膚真菌症の診断法や治療法の情報の提供があげられた.

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© 2016 日本医真菌学会
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