白癬菌抗原キットは,白癬菌の細胞壁に存在する多糖類に反応するモノクローナル抗体を使用してイムノクロマト法の原理で検体中の白癬菌抗原を検出する.臨床研究から本キットは爪白癬診断において利用価値が高いが,足白癬診断ではあまりメリットがないことが判明したため,爪白癬の体外診断薬として開発を進め,体外診断用医薬品として承認された.本キットの抽出液は爪検体から短時間に効率よく抗原を抽出できる.爪白癬を疑うも鏡検で菌要素をみつけられないときに,本キットによる検査を行って陽性であれば,再度鏡検を行うことで見落としを少なくすることができる.また,鏡検ができない現場でも本キットで陰性の場合は白癬治療を行わないようにすれば,無駄な治療や医療費を減らすことができる.本検査法はあくまでも従来の真菌検査法を補完するもので,最終的には鏡検による形態学的確認を要する.鏡検と本キットを組み合わせることにより爪白癬診断の精度が高まることが期待される.