2007 年 18 巻 1 号 p. 31-39
Evidence-Based Physical Therapy(EBPT)という用語が,この数年で急速に普及してきた。臨床疫学的根拠の重要性が説かれ,根拠のない治療・介入に対する問題意識が定着してきた証拠であろう。Evidenceは,検査・測定,予後予測,治療・介入の立案において活用することが可能である。検査・測定では感度および特異度などの特性を知ることにより,障害構造を客観的に検証することができる。また,正確な予後予測は,その後の介入に際して様々な準備を可能にするものであり,リハビリテーション医療にとって重要な仕事の一つである。一方,治療・介入に関する理学療法領域のEvidenceは十分といえず,今後データの集積が期待される状況にある。ただし,個別性の高い理学療法においては,臨床疫学的手法のみのEvidenceの集積には限界があり,個々の症例検討をあらためて大切にすべきであると感じる。EBPTを実践するうえでは,基礎となる理学療法モデルの構築が不可欠であり,本論では医療倫理学の原則論を基にした体系化を一例として取り上げ論考する。