理学療法の歩み
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特別寄稿
  • 照井 佳乃
    2023 年 34 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    脳卒中患者の中には,肺炎を発症する者や拘束性換気障害が生じる者がいる。脳卒中患者の呼吸に対する介入は,肺炎予防で実施されることが多いものの,近年,呼吸筋トレーニングが運動耐容能の改善に有効であることが示されつつある。本論文では,1.人工呼吸器使用中や不顕性誤嚥による肺炎の予防,2.拘束性換気障害,3.呼吸筋筋力低下と呼吸筋トレーニング,4.呼吸機能・呼吸筋力と歩行パラメータについて紹介する。4.呼吸機能・呼吸筋力と歩行パラメータの関連については,著者らが進めている研究であり,歩行パラメータは特に左右非対称性に着目している。呼吸筋トレーニングは専用のデバイスを用いることで臥位や座位でも実施でき,運動耐容能の改善が期待できることから,転倒リスクの少ない自主トレーニングに使用できると考える。今後更なる検討が必要であるものの,本論文が脳卒中患者に呼吸筋トレーニングの実施することを検討する一つのきっかけになればと考える。

  • 藤澤 宏幸
    2023 年 34 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    理学療法は,疾病治療とリハビリテーション医療における社会復帰支援のための動作の再建を通して,国民の健康・福祉に貢献している。その成熟を図るためには,哲学・倫理レベル,パラダイム・理論レベル,実践レベルの各階層で議論が必要である。臨床に直結する実践レベルにおいては,臨床研究が進められているものの,パラダイム・理論レベルにおいては議論が十分とはいえない。その意味で,理学療法モデルの構築が課題としてあるが,2000年に国際障害分類試案から国際生活機能分類へ移行した際に,理学療法の治療モデルとしていた機能障害-能力低下-社会的不利の因果モデルは臨床では用いられなくなった。国際生活機能分類における生活機能モデルは専門職間の共通言語としては有用と考えられるが,それに連結できる理学療法モデルが必要であり,その一つに行動制約モデルがある。行動制約モデルは運動行動の階層性に基づいたものであり,行為を射程に入れた動作の再建という意味では有用であるが,疾病治療のためのモデルとしては不足しているところがある。そこで,本論では,理学療法を考えるうえでの疾病の捉え方を,病因,病理,機能不全・機能障害の循環的な関係性によって整理し,疾病治療における理学療法モデルの位置づけを検討する。

研究報告
  • 中野 晃輔, 横田 純一
    2023 年 34 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究はポジショニング変化がpeak cough flow(PCF)と呼吸機能に与える影響を明らかにすることを目的とした。対象は20人の健常若年男性とし,座位,側臥位,ベッドアップ30度位,背臥位の各ポジショニングにおける咳嗽力および呼吸機能を,スパイロメーターを用いて測定した。各ポジショニングの測定順序は無作為化した。結果,PCF,肺活量,対標準肺活量,1回換気量,1秒率,1秒量,努力性肺活量はポジショニング間で有意差を認めなかった。一方で,座位・側臥位はベッドアップ30度位・背臥位と比較し,最大吸気量は有意に低く,予備呼気量は有意に高かった。また,PCFと肺活量,1秒率,1秒量,努力性肺活量との間で有意な正の相関が認められた。座位・側臥位とベッドアップ30度位・背臥位の間に存在する呼気量と吸気量の相反関係が4つのポジショニング間でPCFに有意差を認めなかった原因であった可能性が示唆された。

短報
  • 山本 恭平, 千葉 恭弘, 麻野 光弘, 田中 秀達, 大沼 正宏, 山田 則一
    2023 年 34 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    【目的】人工股関節全置換術後の股関節周囲筋の評価について様々な検討がされているが,ハンドヘルドダイナモメーターを用いた等尺性筋力測定を用いて評価した報告が多い。等速性筋力測定機器を用いて,術前から術後1年までの筋力評価を行い,患者立脚評価の推移との相関を検討する。方法:筋力測定は等速性筋力測定機BIODEX SYSTEM 4(Biodex Medical Systems 社製)を使用し股関節屈曲,伸展,外転筋力を術前, 術後半年, 術後1年で評価した。 患者立脚評価として日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(the Japanese Orthopaedic Association Hip Disease Assessment Questionnaire;JHEQ)を用いた。【結果】股関節周囲筋力は術側,非術側ともに,全ての筋において術前に比し術後半年,一年で改善していた。JHEQの各スコアは術後半年,一年で有意に改善していたが,術後半年から一年にかけて有意差はなかった。 また,術後半年における屈曲筋力と外転筋力,術後1年の屈曲筋力とJHEQにおける動作項目に有意な弱い正の相関を認めた。【結論】術側,非術側とも術後半年から1年にかけて股関節周囲筋の改善が得られていた。筋力の改善に伴い動作項目の改善が得られていたことから,術後患者満足度の向上につながる可能性があると考えられた。

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