理学療法の歩み
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特別寄稿
  • 藤澤 宏幸
    2026 年37 巻1 号 p. 3-10
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/25
    ジャーナル フリー

    理学療法の最終的な目的は対象者の幸福感と生活の質を高めるという“健康の増進”にある。しかし,団塊世代が後期高齢者となる2025年を迎え,日本は本格的な多死社会となり,健康の意味があらためて問われようとしているのは間違いない。平均余命は延伸したが,その分,体力が低下したなかで,死を迎えるまで時間も長くなった。健康寿命という概念が2000年に世界保健機関により定義され,健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間とされた。逆にいえば健康は日常生活が制限されない状態ということになる。しかし,本当にそれは健康なのであろうかという疑問も湧いてくる。歴史的にみれば,1948年の世界保健機関の健康の定義に始まり,徐々に健康は目的ではなく目的の行為を遂行するための能力として捉えられるようになってきた。本論では,健康に対する認識の歴史を踏まえ,健康の定義および理論について概観したのち,最終的には理学療法にとっての健康とは何かについて考えてみたい。

  • 川崎 翼
    2026 年37 巻1 号 p. 11-18
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/25
    ジャーナル フリー

    運動学習は,熟練したパフォーマンスの能力に比較的永続的な変化を導く経験や練習に関連した一連の過程であり,その評価はリハビリテーションにおいて極めて重要である。本総説では,運動学習の基礎概念を簡潔に整理したうえで,評価の意義とその臨床実装に資する具体的な評価プロセスと方法を提示する。特に fast learningとslow learning の概念に基づき,初期評価での即時的な変化の把握と,再評価での保持・転移を含む継時的変化を捉える手法として,①運動学習能力,②阻害要因,③学習の仕方の三段階評価を採用し,対象者の個別性を多面的に捉える枠組みを提案する。さらに,「運動の質」という観点から,その評価の重要性と臨床での評価方法の一端を示す。これらを通じて,評価に基づく介入最適化と目標設定の妥当性・再現性の向上を図り,理学療法における運動学習評価の標準化を目指す。

  • ―理学療法士誕生から60年を迎えるにあたって―
    藤澤 宏幸
    2026 年37 巻1 号 p. 19-32
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/25
    ジャーナル フリー

    日本に理学療法士が誕生して60年を迎えようとしている。1966年に第1回理学療法士・作業療法士国家試験が実施され,183名の理学療法士が生まれた。しかし,60年の航海にあたって通史がいまだ存在しない。この節目に,理学療法士が日本で誕生し,どのように社会に受け入れられてきたのか,胎動期,黎明期,浸透期,認知期,拡大期,成熟期の6期に分け,高齢化率,リハビリテーション科標榜数,障害構成,国家試験合格者数などの変遷や時代背景をもとに検討する。

講座
  • ―教師との関係性から考える予防理学療法の学校支援モデル―
    鈴木 誠
    2026 年37 巻1 号 p. 33-41
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/25
    ジャーナル フリー

    近年,児童生徒の運動器障害の課題が広く認知され,国レベルでの対策が進んでいる。今後,学校現場における予防理学療法としての関わりをさらに発展させていくためには,理論レベルでの議論を深めていく必要がある。そこで本論では,筆者自身の取り組みを通じて得られた経験を踏まえ,Profession(専門職)の概念を核とし,教師との関係性から考える予防理学療法の学校支援モデルについて検討する。「評価,計画,介入」の一連のプロセスは,理学療法士が専門職として場や対象にとらわれず使用することのできる中核的な概念であり,「理学療法モデル」に通底するものであると捉えることができる。これから学校保健領域に関心と期待を持つ理学療法士が増え,児童生徒の健康課題に対する多くの実践例も期待できる。そんな時,拠りどころとなる体系化・理論化された予防理学療法の学校支援モデルが必要であり,その構築は喫緊の課題であるとも言える。

症例報告
  • 村上 海夕
    2026 年37 巻1 号 p. 42-50
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/25
    ジャーナル フリー

    呼吸リハビリテーションのエビデンスが最も蓄積されているのは慢性閉塞性肺疾患であり,呼吸器外科疾患におけるエビデンスレベルも整いつつあるがその普及に向けてさらなる検討が必要である。難治性膿胸に対し胸壁開窓術(OWT)を施行した症例における術後呼吸リハが,重点的に行ったコンディショニングが呼吸困難感とそれに伴う入眠難に改善をもたらし,さらにコンディショニングの継続により運動療法の強化が実現できた。個別的に設定した負荷量での運動療法を継続した結果,身体機能の改善および身体活動の維持に寄与し,術後3か月の時点で屋外への外出が可能になった。多大な身体的負担を伴うOWTにおいて呼吸リハビリテーションの効果が良好に発揮され,呼吸器外科疾患に対しても呼吸リハビリテーションは有効な治療戦略である可能性を示唆する結果となった。

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