抄録
近年の脳卒中障害の傾向として,高齢化に伴う合併症の複雑化が挙げられる。合併症の中でも誤嚥性肺炎は脳卒中患者の直接死因の第1位であるなど理学療法遂行にとっても重大な影響を及ぼす。誤嚥性肺炎には嚥下障害によるものと,嚥下障害がはっきりしない不顕性のものがあり,両者に対し予防的な介入を含め呼吸理学療法が効果的である。しかし現状の問題として,脳卒中障害後遺症患者への呼吸理学療法介入は認識が十分ではないことが挙げられる。そのためには脳卒中後遺症と呼吸理学療法を結びつけ,理学療法介入の一部であることを認識することが必要不可欠である。よって本論では,脳卒中後遺症と誤嚥性肺炎との関連性を嚥下障害の視点から整理すること,および現状における呼吸理学療法の展開について議論することとする。