抄録
今回,見当識障害により生活リズムの乱れが生じ食忘れや活動意欲の低下などの行動異常が生じた症例に対し,再び自宅で生活するための問題点を抽出しアプローチを行った。見当識障害に対しては日課表やカレンダー等を設置し,日中の活動意欲低下に対しては毎日決まった時間に絵を描くことを行った。結果,日課表やカレンダーの見方が理解されなかったため日付などは学習されなかったが,絵を描いたことで日中に集中出来る時間ができ日中の臥床時間が減少し居室以外の場所で過ごすことも多く見られるようになった。
認知症の行動異常について,その頻度や現象は個人差がある。認知症症状の表面だけでなく,個人の生活歴や性格,志向などを知ることが原因や対処方法などを探るうえで重要であり,さらに知り得た情報を介護者へ伝え対応を統一することで,よい反応を引き出すことが可能であると考える。