肩関節障害は運動器の障害であるが幅広い領域で対応が求められる。どの領域にも通じて必要になることは肩関節自体の病態やその機序を把握することである。特にバイオメカニクスは病態の機序を理解するのに不可欠であり,肩関節障害の理学療法における一つの基盤である。評価においては疼痛,可動域,筋力に関するものが主体となる。疼痛の原因の一つには物理的刺激があり,その種類として1)肩峰下インピンジメント,2)関節内インピンジメント,3)伸張の3つが挙げられる。疼痛の評価ではこれらの物理的刺激がどのようにして生じているのかを知ることが重要である。関節可動域や筋力の評価においては肩関節に関連する関節や筋の構造について熟知しておく必要があり,それによってなぜ制限や低下が起きているのかが明確になる。治療においては構造異常による不利益と治療効果の限界を踏まえながら,残存機能を最大限に発揮できるようにアプローチしていくことが要点となる。