理学療法の歩み
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特集
心機能に着目した理学療法
―心不全に対する理学療法の展開―
澤邉 泰
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2015 年 26 巻 1 号 p. 10-19

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抄録

心不全の治療は1960年代後半に早期離床・早期退院の考え方が定着し,1970年以降に運動療法が普及していった。その後,運動療法の安全性や有効性について多くの検討が行われ,多くの有益な効果が得られることが判明し,心疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインにおいても運動療法の効果について示されている。我々理学療法士が心不全患者に対して理学療法を提供する上で重要となるのはリスク管理である。理学療法士が「心機能」として一般的にイメージするのは左室駆出率(Left Ventricular Ejection Fraction: LVEF)ではないだろうか。LVEFが40%未満になると左室機能障害といわれ,心疾患に対する理学療法のリスク管理の指標としては重要となる。しかし,LVEFの低値が運動中止基準とはならなない。近年,我が国では高齢化が進み,65歳以上の割合が総人口の25%となり,「超高齢社会」となった。必然的に理学療法分野においても対象者の高齢化が進んでいくことは容易に想像することができる。特に老年期には心不全の発症頻度が増加するため,脳血管疾患や整形外科疾患などにおいても心疾患の既往を有している可能性が高くなり,重複した障害像を認める時代を迎え,高齢者の心臓の特徴を踏まえた循環障害に対する理学療法が重要となる。本稿では心臓の解剖・生理の基本,心不全の病態・典型的症状,心不全に対する理学療法について詳述する。

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© 2015 宮城県理学療法士会
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