2019 年 30 巻 1 号 p. 24-31
動作分析は理学療法において最も基本となる評価法の一つであることは論を俟たない。我々は動作分析の体系化を進めており、動作分析を日常動作分析と特定課題分析に大別している。日常動作分析は、起居動作および歩行を分析対象とし、対象者がその状態で普通に行う動作を分析するものである。この場合、正常範囲の運動パターンとの比較により、異常性を判断する。もう一方の特定課題分析は、ある運動機能が重要となる課題を与えて、その運動機能の優劣を判断するものである。臨床においては日常動作分析と特定課題分析を組み合わせながら、日常動作を効率よく行えない原因、すなわち機能低下を分析してゆく。本稿では、我々が体系化を進めている「データに基づいた臨床動作分析」の概要を説明したのち、運動機能低下を絞り込むために重要な特定課題分析について、身体運動学的観点から根拠を示したい。先にも述べたように、特定課題はある運動機能に焦点をあてており、治療へも応用可能という点で重要である。特定課題分析の意義を理解することで、的確な仮説のもとに治療が可能になるということを共有したい。