宮崎県立看護大学研究紀要
Online ISSN : 2436-3553
Print ISSN : 1345-692X
介護保険制度におけるケアプラン様式改正のケアマネジメントへの影響
佐藤 信人
著者情報
研究報告書・技術報告書 フリー

2022 年 22 巻 2 号 p. 1-11

詳細
抄録

2021年3月末日に改正された介護保険制度のケアプラン標準様式及びその記載要領が「利用者主体」の理念を損なうことにならないかという点が本論の問いの核心である。 従来,当該標準様式においては,冒頭に「利用者及び家族の生活に対する意向」を明記してきた。生活の主体である利用者を尊重し「利用者が自らの意思で自らの自立した日常生活を実現するためにサービスを利用していくよう支援する」という利用者主体の理念を具現化したものであった。 しかし,今回の改正は,これを「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」と改めた。これが,利用者の生活に対する意向を記載せず利用者・家族の有する課題を記載するとした改正であれば,ケアプランを利用者主体からサービス側主体に変更した可能性がある。しかし,これはケアマネジメントのありように大きく影響する政策転換であるから,真の改正意図を検証し,必要があれば所要の提案をすることが本研究の目的である。 当該検証は,改正された通知と,連動している上位の法令とを照合する方法で行った。ケアプランに「利用者及び家族の生活に対する意向」を記載すべきことは,その重要性から介護保険法・同施行規則,省令にも繰り返し規定されているからである。 検証の結果,改正通知の上位法令に改正はなく,前掲の「生活に対する意向」は従来どおりケアプランの記載事項であった。このことは今回の様式改正を,前述の「意向を記載せず」と解することが誤認となることを意味している。このためケアマネジメントを指導する自治体担当者及び実践者の誤認による実践を避けるための協議が急がれる。なお,こうした誤認を誘因する素地があることも指摘する。例えばケアマネジメントの目的を要介護度の維持・改善とする傾向と,それに符合するデジタル化の進展である。こうした動向も利用者主体の理念を揺るがしかねず,ケアマネジメントの今後に影響することとなる。

著者関連情報
© 2022 宮崎県立看護大学
feedback
Top