Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
海洋におけるセレンの循環
鈴木 款三宅 泰雄猿橋 勝子杉村 行勇
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1980 年 31 巻 3+4 号 p. 185-189

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抄録

 海水中のセレンは、溶存無機 (4価および6価)、溶存有機形および粒子状有機形の4種の異なった化学形で存在している。
 溶存全セレンの含量は、次の要因によって規制されている。

  1. 表層と深層との間の水の交換
  2. 溶存無機形セレンが粒子状有機形セレンに変る際の生物生産
  3. 粒子状有機形セレンから溶存セレン (無機および有機形) への酸化分解による再生
 海洋を2層に分け、第1層を0~1,000m、第2層を1,000~5,000mとしてセレンの循環を考察した。北西太平洋の第1層と第2層の溶存セレンの各化学形の平均濃度は次のようである。
    (μg 1-1)
 4価6価有機形全セレン
第1層0.0420.0280.0140.083
第2層0.0580.0630.0080.13

 

 溶存全セレンの循環を、上に述べた溶存全セレン含量を支配している3つの過程の移行速度を仮定して計算した。各化学形セレンの含量について2層間で定常状態が保たれているとすると、全溶存セレンの観測値は以上の考察で説明できる。
 さらに、セレン4価、6価および溶存有機形、粒子状有機形の4つの化学形の間の動的平衡についても同様に考察した結果、計算値と観測値との間によい一致がみられた。

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© 1980 気象庁気象研究所
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