Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
日本上空の下部成層圏内の水蒸気の収支
村松 久史
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1981 年 32 巻 1 号 p. 1-17

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抄録

 札幌・舘野・鹿児島の3地点で露(霜)点ゾンデにより観測された下部成層圏での水蒸気分布について、Brewer model に CH4 の酸化による水蒸気を考慮に入れた修正モデルによって説明を試みた。鹿児島と舘野での分布は(鹿児島の春期を除き)このモデルにより説明できるが札幌での分布は説明できない。このモデルにより得られた結果は; (1) 20.7kmでの鉛直拡散係数は1.2~1.4×103cm2sec-1である、(2) 下部成層圏での水蒸気の滞在時間は、春・冬に小さく (0.3年)、秋に大きい (0.95年)、(3) Hadley循環の下向き平均流の速さは0.010~0.035cm sec-1である。
 冬期の札幌、春期の鹿児島―札幌での下部成層圏内の水蒸気濃度は非常に小さいが、エーロゾルの効果は大きな火山爆発の直後以外では水蒸気の収支に対して無視できる。したがってエーロゾル以外に水蒸気の除去過程の存在が示唆される。

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© 1981 気象庁気象研究所
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