抄録
時間的・空間的に密なパイボ一ル観測資料の解析によって、関東地方の上空に夜間に発達する下層ジェットが夏に存在することがわかった。本報告は、日本の上空における夜間の下層ジェットの解析的な研究の最初のものであろう。
この報告で議論する下層ジェットは、その水平スケールは小さいが、合衆国の大平原で観測されるものに類似している。南西流としてのジェットの極大風速は約20m s-1で、高度200mから700mに真夜に観測される。大規模気圧場からみると極大風の観測値は地衡風速を越えている。注目すべき結果は、ジェット流が陸上を吹き進むにつれて、平均風速の減少にもかかわらず風速の日変化の振幅が大きくなること、日変化の最大振幅の高度は低くなること、そしてジェット流の運動量は相対的に下層に集中していくことである。運動量が時間とともに下層に集中していくことについては、関東地方にみられる夜間の低気圧性じょう乱とこの解析結果とについての比較がなされた。