抄録
東京と筑波における降水中のトリチウム (3HOH) 濃度の経年変化及び季節変化について報告した。一般にトリチウム濃度は、前年に水爆実験が行なわれない場合は年の前半に多く、後半では前半の1⁄3となる。成層圏、対流圏、大陸、海洋をreservoirとし新らしいトリチウムの導入のなかった1963-1967年について簡単なモデル計算を行なうと、トリチウムの下部成層圏における滞留時間は1.7年と見積もられた。この値はみかけの滞留時間 (1.9年) よりも短く、90Srのそれ (1.3年) よりも長い。
また冬の日本海側で気象学的要因により、降下率が著しく増大する核分裂生成物 (ここでは90Srを選んだ) に対しトリチウムの降下率はほとんど変化しなかった。これは対流圏下部ではトリチウムの混合比は高度による変化が少なく、90Srは増大するという両者の鉛直分布の違いから説明できることが分った。