Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
気象レーダーのシークラッターと海上風の関係
磯崎 一郎梯 武浩
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1982 年 33 巻 1 号 p. 35-47

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抄録
 名瀬測候所及び啓風丸の気象レーダーで観測されたシークラッターを解析して、これを海上風の推定に利用する場合の問題点についてのべる。気象レーダーで得られたシークラッターの強度は航空機や人工衛星搭載の散乱計と同様に風速の冪乗に比例するが、冪数は後者で得られた値の約2倍に近い。方向分布特性では風上側で強く、その他では弱い。航空機や人工衛星の観測では入射角20°~80°の範囲で風上と風下で極大、横風方向で極少になることが知られているが、これと著しく異る。
 航空機及び人工衛星に搭載した散乱計では海面への入射角を20°~80°の範囲に選んで海上風の推定を試みているが、陸上基地のレーダーでは入射角は90°に近い。このため海面での電波後方散乱の機構が異る。すなわち、陸上基地の気象レーダで得られるシークラッターはBragg散乱のほかに、共存する風波によって海面に蔭が生ずる効果と、表面張力波が変調を受ける効果とが重要になる。我々の得た結果はこれらの効果によって定性的に説明できるが、実用のためには定量的見積りが必要となるであろう。
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© 1982 気象庁気象研究所
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