抄録
1977年8月4-5日に伊勢湾地区で行われた特別観測データを用いて、光化学スモッグの数値シミュレーションを試みた。その際、気流は実測地上風とパイロットバルーンデータの内挿で与え、大気汚染物質の拡散は拡散方程式の数値解で表現した。また光化学反応は簡略化した池田モデルを導入して計算した。
結果は、早朝に海岸で発生したO3が海風の侵入とともに内陸に移動しながら濃度をたかめ、午後に最盛期をすぎて対象領域の外へ出て行くのが表現され、4-5日ともほとんどの地域で十分な計算精度を示した。ところが知多半島のつけ根部分のみ、5日の昼まえに計算が実測を大幅に上まわった。解析によると、5日のこの領域には伊勢湾からの西より海風が持続し、計算の偏りはこの西より海風の中でおこっていたことが明らかにされた。また地形と熱効果を考慮した西より海風の2次元試算では、大気汚染物質が対流により上昇し、半島丘陵地の上空を通りすぎた可能性が示された。
今後、光化学反応モデルを実用に供するためには、局地対流を含めた気流予測モデルの開発が必要と思われる。