Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
1977-1978年有珠山噴火に伴う地震活動
清野 政明
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1983 年 34 巻 3 号 p. 105-141

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抄録

 1977年8月7日の噴火に始まる有珠山の火山活動は、1982年3月まで続いた。ここでは、主として1977~1979年の地震、隆起、噴火の資料にもとづき、火山活動が、エネルギーの面からと地震の統計の面から検討されている。
 地震波動の総エネルギーは9.6×1020ergに達し、この値は軽石噴火による運動エネルギーに匹敵する。地震波動エネルギーの日変化は、2つの時期において指数函数的減衰を示す。又、山頂火口の隆起と比較すると、このエネルギーは隆起量と明確な比例関係を持つことが示される。
 活動の後期に発生した一連の中小噴火に際して、地震活動や隆起が噴火活動と相補的関係にあることがわかった。この事実から、地震波動エネルギーと地殻変動エネルギーとの和が噴火の機械的エネルギーと定量的相補関係にあると仮定することにより、地殻変動エネルギーは地震波動エネルギーの9倍程度になると推定される。
 これらの結果は、地震波動エネルギーの日変化の指数函数的減衰過程において、マグマが、深部からの物質やエネルギーの供給なしに、その体積増加により仕事をすることを示唆する。
 又、地震に関する統計的解析がなされるが、今回の地震群は、M4.3に規模の上限を持ち、その規模別度数分布は極大を持つ特殊な形を示す。更に、地震の時間間隔の調査から、この地震群は2日間以内に群発する傾向を持つことがわかる。この群発状態を一事象として、1979年1~9月についてその時間間隔を調べると、地震波動エネルギーの和が2日間に1.4×1018erg以上となる地震群発事象は9~12日の周期的発生傾向を持つことがわかる。
 これら統計的結果から、山頂火口内で同一断層がくりかえし運動し、マグマの上にあり、かつ断層でかこまれたブロックが“スティック・スリップ”的過程で隆起するという結論がみちびかれる。

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© 1983 気象庁気象研究所
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