抄録
海水中の金属元素と、溶存有機物の相互関係を検討した。一次近似として新しい化学平衡モデルを考えた。このモデルでは、海水中と海洋生物体内中の間の金属の活量が等しく、同時に、各溶存液中で、化学平衡が成立していると仮定した。その結果、次の関係が得られた。
CbM=(CbL/CL)Corg.M
この関係を用いると、海洋における溶存有機物と金属との関係を合理的に説明できる。すなわち、溶存金属元素のうち、金属有機化合物と有機配位子、無機態金属元素と、無機栄養塩との間にそれぞれ相関があり、最近、栄養塩型分布として報告されているある種の遷移元素と栄養塩との関係も矛盾なく説明できることが明らかとなった。また、このモデルから、植物プランクトンの金属の濃縮係数の最大値 (10
5) を評価することができた。