抄録
1974年の8月9目から11月20日までの間、東京において地表付近の水蒸気中のトリチウム (HTO) を、従来行なっている降水中のトリチウムと共に測定を行なった。
8月から10月までは、地表付近でのトリチウム混合比は、台風により運ばれた空気中を除いて相対的に高い値となった。この混合比は10月中旬、急に減少し、このことは、上空からのトリチウムの流入の減少を意味していると考えられた。
これらの期間それぞれトリチウム濃度 (TR) は、大気の水蒸気混合比の逆数と直線関係にあり、その相関係数は0.74・0.65であった。
同時に採取した水蒸気と降水のトリチウム濃度は、ほとんど等しい値となった。この理由のひとつとして、雨滴と周辺の空気中の水蒸気とのはやい水分子交換反応が考えられた。