抄録
XAD-2樹脂を用いた海水中の溶存金属有機化合物の新しい測定法を報告する。中性および塩基性金属有機化合物はpH8、酸性金属有機化合物はpH3で樹脂上に捕集する。夫々の化合物を、メチルアルコール、および希アンモニア水で溶離し、溶離液中の金属元素の定量を行う。ゲル排除法とXAD-2吸着法との比較結果は極めてよい一致を示している。XAD-2樹脂に捕集された金属有機化合物の主要な分子量は1×103から2×104を示す。樹脂に吸着される蛋白質および結合型アミノ酸の量と、金属濃度の間にはきわめてよい相関関係がある。このアミノ酸組成は、海水中のものとは異っており、また、分子量グループでも異なっている。種々検討の結果は、本法によってえられる海水中の金属有機化合物は、海水中にはじめから存在していたもので、分析過程で樹脂上に濃縮された有機物に2次的に金属イオンが捕集されて生じたものではないことを示している。本法は、従来困難であった海水中の金属有機化合物の分離定量に極めて有効な方法であることをたしかめた。