伊豆大島三原山で発生した孤立型噴火微動を島内の39地点で観測し、微動の記録を周波数分析して比較することにより、微動の震動特性、伝播特性、異常減衰地域等を調べた。おもな結果は次の通りである。
1) この微動は三原火口 (中央火口) の小さなストロンボリ式噴火に伴って発生する。
2) 微動と噴火とを対照しながら観測したところ、微動の波形は噴火現象に対応してP, Q, X相から構成されていることがわかった。P相は噴火時刻に先行、Q相は噴火と同時、X相はQ相から若干遅れて発生する。
3) 遠方の観測では、波形が小さかったり、記録中に雑振動が混ざるため、P, Q, X相は区別できなくなる。しかし、3つの相の中ではQ相の振幅が最も大きいので、各観測点の微動の最大振幅はQ相で代表できる。
4) 微動の振動周波数は30Hz以下の広い帯域で観測された。このように、やや高い周波数の振動が検出されたのは、噴火による爆発音や噴出物の放出による高周波の振動が微動の中に含まれるためだと考えられる。
5) 微動の最大振幅は多くの観測点で3Hzの波動に現われている。
6) 3Hzの波動は実体波と表面波のどちらでも説明できる。しかし、5Hz以上の高い周波数の波動は実体波として伝わることがわかった。
7) 微動が伝播するときの距離による振幅の減衰の状態は、周波数の高い波動ほど減衰係数が大きくなる。
8) 微動の振幅は、三原火口周辺から伊豆大島の東部地域にかけて、期待値よりも小さく観測される。すなわち、この地域ではQ構造値が低いことを示している。島の東部一帯の地質構造は、他の地域とくらべて粗い密度構造をしているので、これが波動の異常減衰の原因をなしていると考えられる。
9) 三原火口の西北西と東南東火口近くでは10~12Hzの波動が卓越するところがある。この現象は山腹や山麓の観測点では見られない。三原山の内輪底の一部の新しい火山砕積物に原因する振動だと考えられる。
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