Papers in Meteorology and Geophysics
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36 巻, 3 号
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原著論文
  • 藤谷 徳之助
    1985 年 36 巻 3 号 p. 157-170
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     熱帯海域においては、大量の水蒸気が大気境界層を通して自由大気中に輸送されており、これが大規模運動のエネルギーとなっている。熱帯海域の接水境界層中における乱流輸送過程を明らかにすることは、GARPの重要な課題の一つである。乱流輸送量を正確に算定するためには、渦相関法を用いるのが最も望ましく、これまでにもこの方法を用いた観測が、著者等によって試みられている (Mitsuta and Fujitani, 1974)。これまでの測定では、船の動揺の測定には電気式傾斜計や加速度計を用いている。今回、動揺測定の精度を向上させるために安定プラットフォーム (Stable Platform System: SPS) を開発し、MONEX観測計画による熱帯海域での乱流輸送量の測定に使用した。SPSは、鉛直ジャイロ・レートジャイロ・加速度計・プラットフォームから構成されており、船体運動の各要素 (ピッチ角・ロ一ル角・ヨー角・ピッチ角速度・ロ一ル角速度・ヨー角速度・加速度3成分) を測定することができる。
     MONEXの期間に得られたデータを用いて、風速の補正計算の誤差の評価を行った。相対誤差でみると、u・v成分では6%程度、w成分では14%程度となっている。航空機観測の結果では (Bean and Emmanuel, 1980)、誤差のr・m・s・値は、2% (u成分)・20% (w成分) 程度であり、今回の結果と比較すると、u成分については多少精度が劣るが、w成分については今回の結果の方が良いことがわかる。MONEXは海面の穏かな熱帯海域で行われたため船体の動揺は小さいが、乱流輸送量の測定は海面状態が荒天の場合にも行う必要がある (例えばAMTEXにおける観測など)。AMTEXで得られた動揺のデータを用いて相対誤差を求めてみると、u成分で5%程度、w成分で20%程度となり、多少精度は低下するが、充分に観測に適用できるものと考えられる。
     MONEXで測定された風速と補正後の風速のスペクトルを比較すると、補正前のスペクトルにはうねりによって生じた船体の動揺に対応するはっきりしたピークが認められるが、補正後のスペクトルにはこのピークは認められず、いずれの風速成分においてもスペクトル密度は、-5/3乗則に従って減少している。さらに運動量輸送量に対応するコスペクトルを求めると、補正前では上向き輸送が認められたが、補正後では正しく下向きとなっている。
     これらの結果から今回開発したSPSは、船上での乱流輸送量の直接測定に充分使用できるものと考えられる。
  • 田中 康裕, 中禮 正明, 久保寺 章, 笠原 稔
    1985 年 36 巻 3 号 p. 171-185
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     伊豆大島三原山で発生した孤立型噴火微動を島内の39地点で観測し、微動の記録を周波数分析して比較することにより、微動の震動特性、伝播特性、異常減衰地域等を調べた。おもな結果は次の通りである。
     1) この微動は三原火口 (中央火口) の小さなストロンボリ式噴火に伴って発生する。
     2) 微動と噴火とを対照しながら観測したところ、微動の波形は噴火現象に対応してP, Q, X相から構成されていることがわかった。P相は噴火時刻に先行、Q相は噴火と同時、X相はQ相から若干遅れて発生する。
     3) 遠方の観測では、波形が小さかったり、記録中に雑振動が混ざるため、P, Q, X相は区別できなくなる。しかし、3つの相の中ではQ相の振幅が最も大きいので、各観測点の微動の最大振幅はQ相で代表できる。
     4) 微動の振動周波数は30Hz以下の広い帯域で観測された。このように、やや高い周波数の振動が検出されたのは、噴火による爆発音や噴出物の放出による高周波の振動が微動の中に含まれるためだと考えられる。
     5) 微動の最大振幅は多くの観測点で3Hzの波動に現われている。
     6) 3Hzの波動は実体波と表面波のどちらでも説明できる。しかし、5Hz以上の高い周波数の波動は実体波として伝わることがわかった。
     7) 微動が伝播するときの距離による振幅の減衰の状態は、周波数の高い波動ほど減衰係数が大きくなる。
     8) 微動の振幅は、三原火口周辺から伊豆大島の東部地域にかけて、期待値よりも小さく観測される。すなわち、この地域ではQ構造値が低いことを示している。島の東部一帯の地質構造は、他の地域とくらべて粗い密度構造をしているので、これが波動の異常減衰の原因をなしていると考えられる。
     9) 三原火口の西北西と東南東火口近くでは10~12Hzの波動が卓越するところがある。この現象は山腹や山麓の観測点では見られない。三原山の内輪底の一部の新しい火山砕積物に原因する振動だと考えられる。
  • 杉村 行勇, 鈴木 款
    1985 年 36 巻 3 号 p. 187-207
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     XAD-2樹脂を用いた海水中の溶存金属有機化合物の新しい測定法を報告する。中性および塩基性金属有機化合物はpH8、酸性金属有機化合物はpH3で樹脂上に捕集する。夫々の化合物を、メチルアルコール、および希アンモニア水で溶離し、溶離液中の金属元素の定量を行う。ゲル排除法とXAD-2吸着法との比較結果は極めてよい一致を示している。XAD-2樹脂に捕集された金属有機化合物の主要な分子量は1×103から2×104を示す。樹脂に吸着される蛋白質および結合型アミノ酸の量と、金属濃度の間にはきわめてよい相関関係がある。このアミノ酸組成は、海水中のものとは異っており、また、分子量グループでも異なっている。種々検討の結果は、本法によってえられる海水中の金属有機化合物は、海水中にはじめから存在していたもので、分析過程で樹脂上に濃縮された有機物に2次的に金属イオンが捕集されて生じたものではないことを示している。本法は、従来困難であった海水中の金属有機化合物の分離定量に極めて有効な方法であることをたしかめた。
  • 島津 好男, 福留 篤男, 吉田 明夫
    1985 年 36 巻 3 号 p. 209-217
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     御前崎の体積歪計で観測される歪について、降水に対するレスポンスの性質や、気圧係数の変化、経常的な歪変化の特徴などを調べた。その結果、降水によって歪は縮み、降水量が多くなるにつれて歪の変化量も大きくなるが、その変化には頭打ちの傾向がみられること、気圧係数には年周的な変化があって、これは地下水位の変化と関係をもっているらしいこと、これまで何回かみられた急激な縮み変化は純粋な縮みの増大ではなく、むしろ定常状態への回帰を表わしているらしいこと等がわかった。こうした調査を他の観測点についても行ない、それらを相互に比較すれば、広域な応力場の変化に相当する現象なのか、それともごくローカルな、例えばカップリング状態の変化に対応するものなのかを判別することができるようになるだろう。
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