抄録
伊豆半島東方沖において1989年6月30日に群発地震活動が始まり、7月11日には火山性微動が観測され、13日には海底噴火が目視されるに至った。この間の火山性微動の諸性質について、気象庁の常時地震観測網のデータを用いて解析した。
火山性微動は群発地震活動が鎮静化に向かっていた時期に発生した。そのスペクトルは1Hz前後の低周波の波動と3Hz以上の高周波の波動の2つから構成されている。低周波の波動は11日から12日にかけてその比率を次第に増大させ、13日の微動は11日、12日より低周波の波動が卓越した。13日の19時03~05分に連続的な1Hzの低周波の微動に重なって孤立的に発生した4つの特徴的なイベントは、13日の最盛期の微動とスペクトルが似ており、最盛期の微動にはこのようなイベントが連続的に発生する形で含まれていると考えられる。噴火中の微動に多く含まれている高周波の振動は爆発現象に伴うP波と考えられる。低周波の微動には爆発に励起された表面波と連続的に発生する1Hz程度の微動とがあり、鎌田の観測点における水平面での振動方向をみると、前者がRayleigh波とLove波の混在型であるのに対し、後者はLove波のみで構成されている。
噴火の後、7月21日まで断続的に発生した小振幅の火山性微動は高周波の波動をほとんど含まない。また、その卓越周波数は17日の微動を境に1Hzから1.5Hzに変化した。