Coastal frontとは海から吹きつける暖気と陸上の冷気との間にできる局地前線のことである。この論文では、関東平野に現れるcoastal frontについて典型例を紹介した後、その統計的性質を11年間のアメダス資料を使って解析した結果を示す。統計解析は沿岸地点 (銚子または館山) の風向が北東~南東~南西の範囲にある場合を対象としており、季節・天気 (降水の有無) ・時刻および沿岸地点の風速によって場合分けが行われている。
風・気温のコンポジット解析によると、coastal frontは、(1) 沿岸の風向が北東風である場合よりも南東~南西風の場合に、(2) 暖候期よりも晩秋~冬に、(3) 降水がない場合には昼間よりも夜間に、それぞれ顕著である。晩秋~冬の南東~南西風の場合には、コンポジット場でも5°C以上の気温差を伴う明瞭な収束線が現れる。
Coastal frontの位置を事例ごとに調べた結果によると、frontは多くの場合、沿岸に存在する。しかし、暖候期・強風時にはfrontが内陸寄りに位置する傾向があり、無降水時の昼間にもその傾向がある。Frontが時間とともに内陸へ侵入したり、frontの位置が日変化したりする事例もある。
南東~南西風で降水がある場合には、front付近に多降水帯が現れる。空間平均値と比べた降水量の増加率は数十%である。
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