Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
横ずれ断層、開口断層、円筒状変形体による応力場と関連する地震活動
小高 俊一清野 政明吉田 明夫
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1991 年 42 巻 3 号 p. 105-126

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抄録

 日本の内陸の浅発地震を念頭において、垂直横ずれ断層による静的応力場、ダイク、シルへのマグマの貫入を模して垂直/水平の開口性のくい違い (開口断層) による応力場、圧縮応力場内にある火山体、溶融体等を模して変形し易い円筒状物体のまわりの応力場 (二次元) の計算を行った。計算は主に、暗に仮定している広域応力場に調和的な特定方向の破壊応力 (断層生成に寄与する応力として、ずり応力と一定割合の法線応力を加算したもので、ここでは垂直横ずれ型の地震の発生を仮定している) に対して行い、その分布様式通りに発生したように見える実際の地震活動の事例の収集を行った。
 垂直横ずれ断層の場合、破壊応力の増加は断層延長方向と、さらに断層端よりそれに直交する方向 (で、なおかつdilatationの正すなわち膨張する側) で現れるが、実際の地震活動においても、本震で生じた断層の走向の延長方向で余震活動が活発になったり、本震の断層の端よりそれに共役な副断層の発生が見られた事例はいくつかある。垂直開口断層の場合、特に断層の端よりそれに斜交する方向で破壊応力の増加が認められるが、それに該当すると思われる地震の発生例もある。
 ある深さで水平の開口断層が生じた場合、その上方の地表付近ではdilatationは正となり破壊応力が増加するが、土地の隆起が観測され同時に地震活動が活発化した例は、近年の伊豆半島における活動など実際にいくつか見られる。垂直横ずれ断層、垂直開口断層がある程度の深さで生じた場合も、その上方の地表付近では破壊応力は増加する。
 圧縮応力場内に収縮性の力源 (二次元) が存在する場合、主圧力軸に直交する側で破壊応力が大きくなる。一方膨張性力源の場合は、主圧力軸側で大きくなることが推定される。火山活動に関連して発生したと思われる地震活動において、この計算結果に適合するように見える事例がいくつか存在する。しかし、いずれの場合もマグマ溜まりの存在の有無、位置その他不明な点が多く、適切な比較が困難で、更に検討を加える必要がある。

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© 1991 気象庁気象研究所
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