1991 年 42 巻 3 号 p. 127-143
5層の気象研究所大気大循環モデルによる20年間の積分結果 (コントロールラン) を夏季 (6-9月) のアジアモンスーン領域について解析し、観測と比較した。夏季アジアモンスーンの大規模な特徴は、モンスーンの循環が観測より弱いなどいくつかの欠点はあるものの、概ね、良く再現されている。シミュレーションの不満足な点に関連して、地表面境界条件に関するいくつかの数値実験を行った。コントロールランに見られたアラビア半島の下層大気の冷えすぎは、ペルシャ湾と紅海の3つの沼地の格子点を陸地に代えることによって改善された。ヒマラヤ山麓の雨が少なすぎた点は、インド亜大陸の土壌を強制的に湿らせると、幾分、改善された。これらの実験はリージョナルな気候に対して、地表面過程が重要な役割を果たしていることを示している。しかしながら、上記の実験で見られた改善はリージョナルな規模に留まっており、モンスーン全体の大規模な流れの誤差を大きく改善するものではなかった。世界中の山岳の高さを上げた実験では、リージョナルな特徴については改善が見られたが、大規模なモンスーン循環はかなり弱まった。余り高すぎる山岳はアジアの夏季モンスーンのシミュレーションにとって、かえって有害であることがわかった。