抄録
海水中から濃縮・脱塩した有機配位子について2通りの測定を行ない、得られた実験結果を熱力学的平衡論に基づいて解析することにより、銅に対して強い錯形成能を有する有機配位子の錯体化学的挙動を調べた。モデル解析の際の各パラメーターは、公表されている論文のデータセットから引用した。解析の結果、強い錯形成能を有する有機配位子は、2つの実験を通して、定量的に銅と錯形成した状態に保持され、その銅錯体が非常に安定であることが分かった。2つの実験結果を相補的に組み合わせることにより、各海水試料中の強い有機配位子と銅との錯体の条件安定度定数の値が1014.9-1016.4の範囲にあることを試算することができた。