抄録
高解像度3重ネスティングの静力学近似数値モデルによって、冬季日本海上に見られる2種類の渦状擾乱が、1990年1月23日~24日の事例についてうまくシミュレートされた。2種類の擾乱は近接時間内に相次いで現れ、それぞれ異なる経路を進む。一方は大陸上で発生し、初め中層 (650~700hPa) にあった渦度の中心をゆっくり下層 (~950hPa) に降ろしながら、日本海上を北東進する。そしてそれはメソαスケールの擾乱の中にメソβスケールの擾乱を埋め込んだ多重構造をしている。もう一方は日本海北西部で発生し、下層の日本海寒帯気団収束帯 (JPCZ) に結びついた水平シアーラインに沿って南東進する。こちらは下層に渦度中心を持つ、いくつかの列状のメソβスケールの小擾乱から成っている。各々の擾乱についてのこのような性質は総観場と関係しており、その骨格は渦状擾乱の発達のシナリオとしてまとめられる。