Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
多重散乱によって積雪の波長別アルベドを計算するときの位相関数の近似法
青木 輝夫青木 忠生深堀 正志
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1997 年 47 巻 3+4 号 p. 141-156

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抄録
 積雪粒子による多重散乱をdoubling法で計算するときのMie位相関数に対する4種類の近似法について調べた。これらの近似法はHansen及びGrantによる2種類の“renormalization法”、“delta-M法”、“direct truncation法”である。4つの方法の比較は、積雪アルベドを積雪粒子の有効半径50, 200, 1000μm、波長域0.3~3.0μmに対して計算し、delta-Eddington近似をreferenceとして用いて行った。Hansenの“renormalization法”の場合、粒子の有効半径1000μmの積雪に対し、太陽天頂角が小さいときにアルベドの最大誤差が0.1以上になった。“delta-M法”によるアルベドは、粒子の有効半径1000μmの積雪に対し、1.4μm以下の波長域において、全ての太陽天頂角で過少評価となった。これは計算に用いたMie位相関数のlook-up tableの前方散乱角の分解能が不十分(その分解能は散乱角2°以下の前方散乱ピークの領域で0.1°)であったためである。そこで位相関数の散乱角10°以下の領域の分解能を10倍に上げたが、粒子の有効半径1000μmの積雪に対し、0.6μm以下の波長域では十分な精度は得られなかった。3つの粒径に対し、全波長域で満足できる結果は、Grantの“renormalization法”と“direct truncation法”によって得られた。これらの方法では前方散乱ピークの領域で0.1°の分解能を持つ位相関数でも十分な精度が得られるため、計算時間及び計算機のメモリーという点からも経済的である。さらに、“direct truncation法”の場合、位相関数の前方散乱ピークの切断角が、5°~20°の範囲であれば、計算結果に対してほとんど影響がないことがわかった。
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© 1997 気象庁気象研究所
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