抄録
孤立峰に対する3次元山岳波を例に、ドイツ気象局の次世代非静力学局地予報モデル (Lokal-Modell) と、気象研究所非静力学メソスケールモデル (MRI-NHM) との簡単な比較を行った。摩擦を含まない下部境界条件を用いたケースでは、両モデルとも3次元山岳波の非静力学線形解析解 (Smith、1980) の特徴をよく表現した。ドイツ気象局計算機システム (CRAYC-98) を用いたCPU時間の相対的な比較では、水平分解能が低い時にはLokal-Modell (タイムスプリット法を用い音波を水平方向には陽に扱うモデル) が、水平分解能が高い時にはMRI-NHM (音波を3方向ともインプリシットに扱うモデル) がより効率的になる傾向を示した。これは音波を水平方向には陽に扱うモデルでは、高分解能時には音速による制限のため小さなタイムステップによる積分回数が増加するためである。MRI-NHMの、1回の3次元楕円方程式直接解法に要するCPU時間は、Lokal-Modellの1回あたりの小さなタイムステップによる積分に要するCPU時間の2倍強で、音速に対するクーラン数と楕円方程式直接解法の繰り返し計算の回数の大小関係が、どちらのモデルがより効率的になるかを決める大まかな目安となる。