抄録
東アジア地域における酸性沈着を評価するために、気象モデルと移流・拡散モデルから構成される硫黄酸化物の長距離輸送モデルを作成した。気象モデルにはFLMを適用し、移流・拡散モデルにはラグランジュ粒子法を用いた。粒子の乱流拡散はランダムウォーク法によって表現し、長距離輸送モデルは乾性沈着、降水による沈着及び二酸化硫黄からサルフェートヘの変換過程を含んでいる。
長距離輸送モデルの検証シミュレーションを北米について実施した後、東アジア大陸からの越境汚染を評価するため、日本の発生源を除いて1年間の輸送シミュレーションを行った。大陸の発生源に起因する硫黄酸化物のわが国における降水による湿性沈着は約0.05gS/m2/年で、乾性沈着はおおよそ0.02~0.17gS/m2/年であった。日本で測定された年間の湿性沈着量は約1.0gS/m2/年程度であり、この測定値には国内の発生源や火山の影響も含まれている。一方、シミュレーションには国内発生源及び火山に起因する硫黄酸化物は含んでいない。シミュレーション結果は国外の発生源による湿性沈着に対する影響は平均的には約10パーセント以内であることを示した。