産業動物臨床医学雑誌
Online ISSN : 2187-2805
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原著
コレステロール代謝異常症様症状を呈したヘテロ子牛12頭の臨床および病理所見の回顧的解析
工藤 彩佳森山 咲渡邊 謙一堀内 雅之古林 与志安猪熊 壽
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2021 年 12 巻 1 号 p. 8-12

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抄録

 ホルスタイン種の牛コレステロール代謝異常症(cholesterol deficiency : CD)と類似した臨床症状,すなわち慢性下痢または筋萎縮を発現したヘテロ子牛12 頭(ヘテロ)の病態を明らかにするために,その臨床および病理解剖所見をホモ発症牛29 頭(ホモ)と比較検討した.両群の慢性下痢,筋萎縮,発熱および食欲低下の頻度に差はみられなかった.ヘテロの血清総コレステロール濃度(中央値29 mg/dℓ)はホモ(中央値8 mg/dℓ)に対し有意に高値であった.赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および平均赤血球容積はいずれもヘテロがホモよりも有意に高値を示したが,白血球数,総蛋白質濃度,AST およびLDH 活性に差はなかった.病理解剖において肺炎,胸膜炎,臍帯炎,心奇形等の器質的異常を認めた割合は,ヘテロ(50%)がホモ(10%)よりも有意に高かった.ヘテロ牛にみられたCD 様症状は器質的病変に基づくものが多く,必ずしも低コレステロール血症に起因しないことが示唆された.しかし,血清総コレステロール濃度が著しい低値(15 mg/dℓ未満)を示したヘテロ2 頭のうち1 頭では,器質的病変がみられず,またホモと同様の食道粘膜の潰瘍が認められた.ホモ同様のコレステロール代謝異常によるCD 様症状がヘテロで発現することを完全に否定することはできなかった.

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© 2021 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
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