Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
新気象研究所結合モデル (MRI-CGCM2)
モデル気候とその変動性
行本 誠史野田 彰鬼頭 昭雄杉 正人北村 佳照保坂 征宏柴田 清孝前田 修平内山 貴雄
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2001 年 51 巻 2 号 p. 47-88

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抄録

 気象研究所において新しい全球大気海洋結合モデル (MRI-CGCM2) を開発した。モデルは、人為起源の強制に関する気候変化を探ることを主な目的としている。旧バージョン (MRI-CGCM1, Tokioka et al., 1996) の欠点を改善し、より現実的な気候とその変動制を再現し、より高精度の気候変化予測を行うことを目指した。モデルの基準実験の予備的な解析において、モデルは全般的に、地上気温、降水、積雪、海氷および海洋の構造と循環などの代表的な要素について (季節変化を含む) 平均気候値をうまく再現している。特に、海氷の分布は大きく改善し、観測される海氷の広がりと厚さに近づいた。モデルは、北大西洋において、MRI-CGCM1ではうまく表現されていなかった現実的な強さの子午面循環を表現している。また、モデルは北極振動 (AO) やENSOのような変動も現実的に再現している。NINO3 (150°W-90°W、4°S-4°N) 領域における海面水温偏差の時系列は、数年おきに大きな正の値 (最大+4°C) を示す。海面水温偏差のパターンは観測されるエルニーニョに似て、中東部赤道太平洋に強い正の偏差を伴っている。現在、モデルはまだいくつかのバイアスを持っている。冬季の高緯度において、大気境界層の安定度が弱く、地上気温が高めとなるバイアスがある。また、水文過程の問題に関連して、夏季の大陸上で、気温が高くなりすぎるバイアスがある。

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© 2001 気象庁気象研究所
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