Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
赤道ベータ面の線型化した浅水方程式系においていろいろな初期擾乱で励起される赤道波のエネルギーの分配について
吉崎 正憲
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2002 年 53 巻 1 号 p. 29-46

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抄録

 大規模大気海洋力学においていろいろな初期擾乱に対する(準)地衡風成分と非地衡風成分へのエネルギーの分配の仕方を理解することは重要である(地衡風調節)。この問題は中緯度f面においてよく調べられてきたが、赤道域ではいくつかの赤道波が励起されてそれらへのエネルギーの分配の仕方は必ずしも明らかではなかった。
 ここでは赤道ベータ面の線型化した浅水方程式系を用いて、いろいろな初期擾乱に対する赤道波のエネルギーを求め赤道域の地衡風調節を調べた。初期擾乱として、関数exp(-x22)Dn(y)(n=1, 2)で表される5つの物理量(圧力、東西風、南北風、発散、渦度)を用いた。ここで、x(y)は東西(南北)方向の座標、λは擾乱のx方向のスケール、Dnはn次の放物柱関数である。また励起される赤道波は、準地衡風的な赤道波(ロスビー波、大きいスケールのケルビン波、ロスビー波に近い混合ロスビー重力波)と非地衡風的な赤道波(慣性重力波、小さいスケールのケルビン波、慣性重力波に近い混合ロスビー重力波)の二つに分けた。
 圧力と東西風の初期擾乱の場合にはλが大きいほど、また南北風と渦度の初期擾乱の場合には逆にλが小さいほど、準地衡風的な赤道波がより強く励起されることがわかった。発散の初期擾乱の場合には非地衡風的な赤道波がほとんどである。このような赤道ベータ面における地衡風調節は中緯度f面の場合と同じである。これから、いろいろな初期擾乱に対する準地衡風成分と非地衡風成分へのエネルギーの分配の仕方は全球で成り立つ固有の特性であることが確かめられた。

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© 2002 気象庁気象研究所
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