抄録
気象研究所気候モデルの最新版(MRI-CGCM2.3)を用いて、20世紀の歴史的な気候変動と21世紀シナリオに関する実験を行った。全球平均地上気温について、モデルは産業革命以前のレベルと比較して現在気候において0.5℃の上昇を再現し、また20世紀に観測された気温トレンドの数十年規模の変化についても満足できる一致を示した。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるSRESシナリオA1Bに対する実験において、全球平均地上気温は21世紀後半に2.4°C上昇する。再現された20世紀後半におけるトレンドの空間的な構造を様々な大気場に対して観測データと比較検証した。モデルは各大気場において観測されたトレンドと合理的な一致を示した。シミュレートされた21世紀の変化の大部分は、その空間的なパターンが20世紀後半に現れたトレンドのパターンと似ていることがわかった。北半球および南半球における海面気圧(SLP)のシミュレートされたトレンドのパターンは観測されたトレンドに似ており、それぞれ北半球環状モード(NAM)と南半球環状モード(SAM)を思わせる空間的な構造である。これらSLPのトレンドパターンは、NAMとSAMに対すると同様に、地上気温、降水量、および帯状平均東西風におけるトレンドと矛盾しない。21世紀の気候変動では、これらの首尾一貫したトレンド構造が強められていくと予測される。また、これら大気の変化と関連した海洋と海氷の変化についても記述する。