Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
数十年スケールにおける北太平洋海洋表層貯熱量の変動特性とアリューシャン低気圧および黒潮流量との関係
長谷川 拓也安田 珠幾花輪 公雄
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2007 年 58 巻 p. 155-166

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抄録
   北太平洋において、数十年スケールの海洋表層貯熱量の変動特性とアリューシャン低気圧、黒潮流量、北太平洋亜熱帯モード水のコア水温、海面水温、海面気圧との関係について調べた。その結果、表層貯熱量偏差は北太平洋中緯度において時計回りに伝播していることがわかった。また、この伝播が1980年以降においてアリューシャン低気圧、黒潮流量、北太平洋亜熱帯モード水のコア水温と連動して変化することが示された。すなわち、アリューシャン低気圧が強化した約5年後に黒潮流量が増加し、さらに数年後に、北太平洋亜熱帯モード水のコア水温および日本の南東海域における海洋表層貯熱量偏差が増加する。このような関係は、過去の研究で指摘された20年スケールにおける関係と類似する。また、海洋表層貯熱量の伝播経路上において、表層貯熱量偏差、海面水温偏差、海面気圧偏差が同期する領域は、日本の南東海域と太平洋中央部を含む黒潮続流域の東方海域のみであることが明らかになった。さらに、表層貯熱量の伝播特性がこの領域で強化されることが明らかになった。本研究の結果から、北太平洋の数十年スケールにおける海洋表層貯熱量の時間空間変動特性や、それと関係する大気海洋偏差場との関連について新しい知見が得られた。
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© 2007 気象庁気象研究所
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