Papers in Meteorology and Geophysics
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ゾンデ飛翔予測プログラムの精度検証とTOMACS観測への適用
清野 直子中野 辰美能登 美之大野 恭治
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2014 年 65 巻 p. 1-14

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抄録

   気象研究所が参画する研究プロジェクト「気候変動に伴う極端気象に強い都市創り」(Tokyo Metropolitan Area Convection Study for Extreme Weather Resilient Cities,TOMACS)では,2011年と2012年の夏季を中心に,首都圏における積乱雲の発達環境等を調べる目的でつくばにおいてゾンデ観測を実施した.この観測への利用を図るため,高層気象台で開発された気象観測用ゾンデの飛翔予測プログラム(Aerological Observation Simulation, AOS)について,落下予測精度の検証を行った.館野における2004年から2010年までの夏季(6月~9月)を対象期間とし、9時の高層気象観測のうち落下位置情報が取得されていた728事例について,AOSによる予測落下位置を観測された落下位置と比較したところ,予測と観測の位置ずれは平均としては偏りが小さく,距離誤差の平均は約16kmだった.観測された落下位置の75%は,70%予測楕円内に収まっていた.また、90%近い事例では,落下観測位置が90%予測楕円内にあり、落下範囲の予測はしきい値90%で概ね観測と整合していたといえる.いっぽう,99%予測楕円の中に含まれていた観測落下位置は全体の96%で,予測よりも低い割合にとどまった.70%予測楕円内に落下していた事例が70%以上あったことには,AOSで水平風速の予報誤差を表現するために設定されていた風速のばらつきよりも,計算に用いた数値予報モデルの水平風予報誤差が小さかったことが関係していた.また,観測時に降水のあった事例ではAOSの予測誤差が大きい傾向が見られた.
   2011年と2012年の集中観測期間(Intensive Observation Period, IOP)を中心とするゾンデ観測に,AOSプログラムを適用した.この観測では,200g気球を用いて到達高度を現業観測より低い22 km程度とし,下部成層圏での東風の影響を受けにくくすることで,ゾンデ落下域が海上になりやすい設定とした.観測で得られたデータに基づき,AOSにおいて200 g気球使用時に用いる上昇速度・到達高度・降下速度のパラメータの見直しを行なった.その結果,落下予測精度が向上することを確認した.

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© 2014 気象庁気象研究所
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