Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
日本国内における昼間の地表面付近の大気放射量推定法
藤枝 鋼
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 67 巻 p. 1-14

詳細
抄録

地上気象観測所の周辺の観測環境が地上気温等の観測結果に及ぼす影響を評価することは重要である。特に、大気や雲からの大気放射(下向き長波長放射)が地表面温度等に影響を与えることにより、気温の観測結果を左右することが知られている。しかしながら、大気放射を観測する地点の数は限られている。このため、気温や水蒸気圧等の地上気象観測データから晴天時の大気放射量(下向き長波長放射照度)を推定する様々な計算式が提案され、陸面モデル等における1時間平均程度の大気境界層の熱エネルギー収支の簡易推定などに利用されている。ところが、これらの式は、特定の地域や過去の限られた期間における観測データに基づいて作成されていたことから、近年の日本付近の気象条件への適用の可能性については、改めて検証する必要があると思われた。

 本研究では、晴天時の大気放射量を推定するためにこれまでに用いられてきた代表的な計算式について、2010年3月31日から新しい日射放射観測が開始された札幌、館野(つくば)、福岡、石垣島及び南鳥島(Marcus島)の国内の5地点における昼間の大気放射量の観測データに基づいて精度評価を行った。その結果、大気放射量の観測値と計算値との間に少なくない誤差やその季節変動等が確認された。このため、各地点の地域特性に合うように、比較的放射理論に基づいた式であるBrutsaert(1975)の式の係数を改良した新しい式を適用した。そして、誤差の季節変動が現れなくなるなどの良好な結果を得た。さらに、曇天時を含む気象条件にも適用が可能となるように、日照時間と相対大気路程(相対エアマス)を用いて、晴天時の推定値を補正する方法を新たに開発し、精度評価をしたところ、計算値と観測値との差の平均値がほぼ0になるなどの良好な結果を得た。

著者関連情報
© 2018 気象庁気象研究所
次の記事
feedback
Top