Papers in Meteorology and Geophysics
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気象擾乱によって起る日本沿岸の水位変動の研究 (V)
関東・東海地方沿岸の高潮
磯崎 一郎
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1970 年 21 巻 1 号 p. 1-32

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抄録

1953年から1962年までの10年間の毎時潮位記録を用いて,関東および東海地方沿岸の高潮の一般的性質を調べた.この海岸の高潮は主として2つの機構すなわち,気圧下降による“ 吹上げ効果” と風の“ 吹き寄せ効果” によつて起っている.この海岸には東から西に向ってゆっくり伝播する海面変動が存在することが日平均潮位変動の統計的解析から明らかになっている(ISOZAKI,1969).しかしこのような潮位変動はここで解析した高潮に伴っては現われなかった.
東京湾と伊勢湾では,水深が浅いために風の吹き寄せ効果が著しく,しばしば破壊的な高潮に襲はれてきた.これらの湾の高潮は電子計算機を用いて,ある程度数値的に再現することが可能であるので,これにょって高潮の種々の性質を調べた. 相模湾,駿河湾および外洋に面した海岸では風の吹き寄せ効果は小さく,高潮の大部分は気圧下降による吹上げ効果で説明される.
高潮にはまた風波やうねりによる潮位上昇-いわゆる“Wave set-up”-が寄与することがある.この効果は舞坂の高潮において最も顕著で,たとえば台風“Wilda”(1964年9月25日)の高潮の場合Waveset-upによる潮位上昇は気圧下降による潮位上昇の約2倍であったと推定される.
大島岡田港の高潮は主として気圧効果で説明されるが,このほかに台風域内のcircularな風の場に起因すると思われる潮位変動が存在する.これはKAJIURA(1956)の議論を定性的に裏付ける結果を示している.

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© 気象庁気象研究所
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