Papers in Meteorology and Geophysics
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雲のある場合の水平面赤外放射量の計算
嘉納 宗靖宮内 正厚
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1974 年 25 巻 2 号 p. 125-137

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抄録

雲のある場合の上向き,下向きおよび有効(上向き-下向き)水平面赤外放射量を「みかけ」の雲量の関数として求めた.その結果,上層雲以上の高度における上向きおよび有効水平面赤外放射量をのぞいて水平面赤外放射量はすべて「みかけ」の雲量の一次関数として表現される.上層雲以上の高度における上向き水平面赤外放射量は上層雲が黒体として扱えないため,「みかけ」の雲量の一次関数よりずれている.
地表面における有効水平面赤外放射量については実測より求めた実験式が提出されているが,そのうちソビエトの研究者等の結果は有効水平面赤外放射量を著者等と同じく上層,中層および下層雲の「みかけ」の雲量の一次関数として与えている.この一次関数の係数は緯度,季節等大気の状態によって変るが,ソビエトの研究者等の与えた値と著者等の気温,湿度等の緯度別の年平均値を基にして計算した値とはほぼ一致している.
地表大気系の冷却率に相等する地表-大気系より放射される上向き水平面赤外放射量F(O)と大気自身の放射冷却率に相等する大気の赤外放射収支量Raは雲量,雲形(種類)によって著しく左右される.F(O)は空が一つの雲層で覆れている場合,雲形の如何にかかわらず雲量の増加につれて減少する.他方,Raは空が上層雲一層だけで覆われている場合には雲量の増加とともに減少するが,中層雲または下層雲一層で覆われている場合には逆に雲量の増加とともに増加する.このことにより,F(O)とRaとの関係は上層雲と中層雲,下層雲とでは逆の傾向にあることがわかる.しかし地表面の有効水平面赤外放射量がほぼ一定になるような条件,例えば下層雲量が1.0でかつ上層雲,中層雲の雲量が任意に變る場合にはRaF(O)の一次関数として相関よく表現される.これは人工衛星,放射ゾンデの観測より求めた結果とよく一致する.

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© 気象庁気象研究所
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