Papers in Meteorology and Geophysics
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1967年5月28日 NSSL 観測網内部で発達した雷雨の風速場・水蒸気場のメソスケール客観観析
二宮 洸三
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1974 年 25 巻 2 号 p. 81-97

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抄録

Severe weatherの研究や監視のためにはメソスケールの客観解析の方法の発展が必要であろう.この報告では1967年5月28日米国Oklahoma州のNSSL観測網内部で発達した雷雨の風速場・水蒸気場のメソスケール客観解析をこころみた.
解析の方法は,Cressman(1959)のそれを基本的に踏襲するがメソスケール解析のため,観測点の“timeto space conversion” を含み,かつ外挿のためのweightは観測時と解析時の時刻差にもよるようにした.客観解析の結果は,独立に行はれたFANKHAUSERER(1969)の主観解析のそれとは,定性的にはよく一致していた.
しかし,たとえば発散を積み上げて求めたω が大気上面で零にちかづかないなどの点にうかがわれるように,その物理的精度は,主観解析を特に上まわるとは云えないようである.上記したω の問題は,O'BRIEN(1970)の示唆したような,風速場の修正を通して一応修正を行っているが,その物理的有意性は必ずしも明白ではない.
客観解析から得られた分布は,下層の強い南風域の北縁に存在する収束帯とそこに発生した雷雨群がともに短時間のうちに同時的に強化発達したことを示している.また雷雨域においてはその発達時に下層における水蒸気フラックスの収束が著しく増大することも示された.
対流圏中層の風速場はあまり雷雲の発達によって乱されないのに対し,圏界面直下の250mb面近傍の風速場は著しく変質される.発達した雷雲の雲頂からのupper outflowがその周辺の著しいdiffuence・divergenceに特微づけられた流れの場をひきおこすためと思はれる.
このようなメソスケール現象のlife historyの定性的記述はこの客観解析でも一応行われ得たが,充分な定量的記述のためには,その方法はもっと改善されねばならない.

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© 気象庁気象研究所
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