抄録
1965年1月16日北陸上空を優勢な上層寒冷渦が通過し,いくつかの中規模擾乱の発達がみられた。これらについてすでに松本・二宮・秋山(1967a)が詳細な“主観解析” を行っているが, “ 主観メソ解析” についてよせられている疑問は必ずしも少なくない。
この日の擾乱のうち,最も顕著であったものを取り上げ,二宮(1974a, b)の解析方法によって,“ 客観メソ解析” を行って,前報との比較を試みるのが本報告の目的である。
得られた気圧場・風速場については両解析の結果の間には本質的な差異はない。得られた発散場のパタンは相互によく一致しているが,客観解析によるものの数値は,やや少ない。主観解析による渦度場のやや細かなパターンは,客観解析では除かれている。これらの差異はsmoothingによるものである。
最も基本的な擾乱の特徴-p~V,p~divの位相関係およびdivergence方程式の主要なbalanceが∂D/∂t(V+V)▽D+1/ρ▽2ρ=0のかたちでなり立っていることは,この客観解析でも確められた。
一方,解析された風の場は,渦度方程式のbalanceを充分に満していないが,各頂の大きさの推定から,∂ ζ/∂t+(V+V)▽ ζ+(f+ζ+ζ)D+(ωx(vz+vz)-ωy(uz+uz))=0が主要なbalanceであることが推定された。これは,平均場とメソ擾乱とのintefaction term(ζD,ωxvz)が渦度場の移動に関係していることも意味していよう。