Papers in Meteorology and Geophysics
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土佐沖低気圧(1974年10月12日)の解析
小沢 正
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1977 年 28 巻 2 号 p. 63-81

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抄録
気象庁海洋気象部,大阪管区気象台,神戸海洋気象台の協力によって,土佐沖低気圧の発生機構の解明のための共同観測が1974,75年の10月に実施された.この研究はその共同観測期間の1974年10月12日早朝に発生した土佐沖低気圧について,その発生前後の11,12日の約2日間における低気圧発生までの過程について, レーダー観測報告などと共に,まず5層準地衡風近似モデルによる大規模運動にともなう数値解析を実施した.
土佐沖低気圧の発生前後の日本附近の対流圏の上,中,下層の層厚の12時間変化の解析により,低気圧発生の約24時間から12時間までの観測された層厚変化の空間分布は,日本附近一帯の対流圏内全層の全般的な増加傾向に対し,特に土佐沖附近の対流圏上層の500-300mbの層厚変化はむしろ減少傾向を示し,地上に低気圧が形成される前にすでに対流圏中層以上の上層に深い中聞規模じょう乱が形成されていることが,この共同観測に参加した啓風丸およびTangoの観測資料から明らかにされた.これは500mb以上の上層の高度低下に対応し,地上の低気圧が形成する前に500mb面より上層になんらかの低気圧性小じょう乱があったことを意味している.また低気圧発生時を含む対流圏内の各層厚の12時間変化はその低気圧域では全層にわたり高温であることも確められた.なお同時に八丈島附近に発生した小低気圧についても上述したと同じ層厚変化の推移を示した.
5層準地衡風近似モデルの数値解析にもとずいて低気圧附近の垂直流の分布,うず度,気温の水平,垂直移流,凝結熱および海面からの顕熱輸送の役割などが詳述される.特にモデルによる土佐沖低気圧附近の上昇流の推移は,衛星写真による雲,およびレーダー・エコーの推移ときわめてよく対応している.
数値解析によるこの土佐沖低気圧の発生過程は大規模な強い傾圧場における第2種の不安定(CISK)に起因する垂直的に深い中間規模じょう乱が,地上に低気圧が発生する前に形成され,そのじょう乱に伴っておもにうず度移流による上昇流が強まり降雨がはじまる.その後温度移流が卓越し上昇流がさらに強化すると同時に凝結熱に伴う大気中層以下での強い温暖化によって,地上に低気圧が現出するという過程であることがレーダ・レポートなどの観測事実と対応させて考察される.なお低気圧形成時には温暖化のため中層以上の高度の中間規模じょう乱は減衰,消失する.トラフの軸の傾斜は海上のため明確ではないがほぼ垂直である.
さらに低気圧発生海域における高層観測点の粗密による垂直流その他の数値解析の結果の比較も検討された.
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© 気象庁気象研究所
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