Papers in Meteorology and Geophysics
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地上における日射の分光測定(1)
エーロゾル粒子の消散係数および粒径分布について
村井 潔三小林 正治後藤 良三山内 豊太郎
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1977 年 28 巻 4 号 p. 169-184

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抄録
1967年以降引続き行って来た日射の分光測定の結果について報告する.最初に試作した装置は直達日射および太陽周辺光の分光測定を目的としたもので,視野角を極めて小さくした集光用望遠鏡と複式分光計を組合せたもので,その後,大気混濁度の監視のための直達日射分光計,全天日射分光計の試作を行った.また,絶対値の検定のための標準光源を作製し,Long methodによる大気外値の外挿と併せて電球による絶対値の検定も可能にした.以上の装置により現在までに得られた資料の中から,第1報としてエーロゾルの消散係数の経年変化とこれに対応して得られる粒径分布の変動について報告する.
1967年から1975年までの間に東京で得られた消散係数の値は,波長の短い領域では年とともに減少する傾向がかなり明瞭に見られる.これに対し,近赤外域ではそれ程明瞭な減少は見られない.これに対応して,エーロゾル粒子の総数の変化は,小さい粒径の粒子数は年とともに明らかな減少を示し,比較的大きい粒子の総数は,期間中の前半はむしろ増加の傾向を示し,その後明瞭な減少を示している.
このようなエーロゾルの特性の変動に対応して東京の視程の変動が認められる.3kmあるいは5km以下の悪視程の年間出現数は上記のエーロゾル総数の減少に対応して減少の傾向を示している、1972年以前の視程の変動を見ると,ゆるやかな減少を示しているが,これに対応するエーロゾルの総数は,小粒子(γ〓0.3μm)は減少しているが,大粒子(γ〓0.6μm)は増加の傾向を示している.1973年以後はエーロゾル総数は全域にわたって減少しており,これに対応して悪視程出現数は大幅に減少している.
以上の解析は,平均値についての対応のみでその詳細な関係はわからない.視程に対するエーロゾルの特性の影響については,個々の場合についての解析を行って,その物理的関係を明瞭にすることが必要である.
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© 気象庁気象研究所
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