日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会50周年記念大会
セッションID: 156-D
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一般発表(ポスター)
rDNA-ITSの塩基配列および AFLPマーカーに基づくショウロ自然集団における遺伝的類縁関係
*松本 晃幸霜村 典宏前川 二太郎長沢 栄史
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抄録
ショウロ(Rhizopogon roseolus (= R. rubescens))は、古くより優秀な菌根性食用きのことして知られているが最近は本菌の外生菌根菌としての機能を海岸クロマツ林の維持・保全などへ利用する点からも注目されている。しかしながら、本菌に関する遺伝学的な知見は極めて少なく、本菌の利用を進める上での基本的情報となる日本自然集団の遺伝的背景についてもまだ把握されていない。そこで本研究では、岩手、宮城、茨城、静岡、新潟、石川、京都、島根、山口、徳島、高知、佐賀、宮崎、鹿児島および鳥取の15府県で採集・分離されたショウロ56株を供試して、rDNA-ITS領域のシークエンス解析および全DNAに対するAFLP(amplified fragment length polymorphism)解析を行ない、ショウロ自然集団における遺伝的類縁関係について検討した。供試した56株のrDNA-ITS領域の塩基配列は採集地域に関係なく、全く同一か、1-3塩基の挿入/欠失あるいは塩基置換による違いが認められるのみであった。また、得られた配列は塩基配列データベースに登録されているR. roseolusもしくはR. rubescensの配列と95%以上の相同性を示した。このうち、ヨーロッパで採集・報告されているR. roseolus 2株(Accession number: AJ41921およびDQ068964) の配列とは99%を越える極めて高い相同性が認められた。一方、AFLP解析では3組の選択的プライマーで、合計223個のDNA断片が検出され、このうち、168個が多型性を示した。AFLP解析における多型断片の有無により類似度係数を計算した結果、供試菌株間の類似度は77‐100%の範囲にあった。距離行列に基づいてUPGMA法による系統解析を行った結果、56株はおおむね地理的に近いもの同士でクラスターを構成する傾向が認められた。以上の結果より、日本に分布するショウロはrDNA‐ITSレベルで極めて均一な集団であることが示されたが、AFLP解析結果からそれぞれの地域で特異的な遺伝的変異を蓄積し、菌株特性に地域差のあることが推察された。
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© 2006 日本菌学会
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