日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会50周年記念大会
セッションID: 157-A
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一般発表(ポスター)
外生菌根断面積にHartig-netが占める割合の推定
*木下 晃彦堀越 孝雄
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抄録
外生菌根は、森林を構成する樹種の細根に形成され、菌鞘とHartig-netと呼ばれる構造を有する。外生菌根を形成する真菌類は森林生態系の炭素循環において見えない炭素のシンクと考えられており、菌鞘やHartig-netを定量的に評価することは炭素循環の実態を解明する上で非常に重要な課題といえる。外生菌根断面積に占める真菌類の割合に関する研究では、菌鞘のみを扱ったものが多く、Hartig-netについてはほとんど分かっていない。また、Hartig-netを構成する菌糸の根内への侵入の程度は、針葉樹と広葉樹では異なることが知られており、菌根断面積に占めるHartig-netの割合も樹種により異なることが予想される。そこで本研究では、Hartig-netが外生菌根の断面積に占める割合、さらにその割合の針葉樹と広葉樹での差異を明らかにすることを目的とした。2005年11月に、Pinus densifloraFagus crenataの外生菌根を野外から採取し、菌鞘の形態的な特徴に基づいて各樹種について5タイプに分類した。ハンドセクションにより各タイプの縦断切片を作成し、中心柱が確認できた各タイプ3枚の切片について顕微鏡画像(x100-400)を撮影した。画像解析から、切片の半径、菌鞘およびHartig-netの面積を測定し、断面積に占める菌鞘やHartig-netの割合を求め、樹種間で比較した。その結果、P. densifloraの菌根断面積に占める菌鞘の割合は8.5-15.1%で、Hartig-netは1.6-2.7%であった。一方、F. crenataの菌根断面積に占める菌鞘の割合は7.2-13.8%、Hartig-netは1.8-2.8%であり、いずれも樹種間で有意差がなかった(n=15, t-test, P<0.05)。
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© 2006 日本菌学会
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